登山の体力作りの方法。目標のためのトレーニングの考え方

今回は私が登山を始める前から登山を始めて体力をつけるまでの話をしたいと思います。
私が登山を始めたころのことを思い出しながらトレーニングについてお話ししたいと思います。当時より体力は落ちていますが、昔は自他ともに認める「体力お化け」でした。

実際にどれだけ連続して歩いても疲れ知らずだった時期がありました。まあ若かったのもあると思いますが。。登山において「体力」は絶対的な基礎能力ですので、ある程度つけておきたいですよね。

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登山を始める前の私の体力は・・・最低

さて、まずは登山(トレーニング)を始める前の私の体力について触れておきます。

それは・・・「最低」

驚くほどに体力がありませんでした。というのも私は登山を始める前までは意図的に体力を落としていた時期があるのです。この話は特に面白くもないのですが、ちょっとお話ししてみます。

興味がなければ次の項目まで読み飛ばしてください!

体力を落とす活動をしていた

まず登山を始める前の私は常に「体力を落とそう」として生活していました。その理由を少し話しします(謎です)。実際には「体力が落ちた」のは結果的なものですが、私の目的は「生活費を最低まで下げること」でした。学生時代の私は研究者を目指していて生活に全く余裕がありませんでした。金銭的にも時間的にも。アルバイトをする時間もなかったため奨学金のみに頼って生きていました。そのため固定費の一部である、生活費の中で最もウェイトを占める「食費」を落とそうと考えたのです。

食費を落とすには食べる量を減らす、そのためには代謝を落とす、代謝の根源は「筋肉」だと考えた私は、体の筋肉をとにかく落とそうと考えていました。別にダイエットしたいとかではなく単に「食費」を減らしたいだけです。我ながら合理的ですが、今思えばちょっとイかれてますね。

この時の私の理想は「仙人」のように霞を食べて生きていけるコスパの良い自分を作り上げることだったのです。

大学構内の寮に住んでいた私は殆ど食べず動かず、昼夜研究室にいて、見事に筋力と体力は落ちていきました。そんな学生時代を何年も続けていたのです。もともと痩せていましたが、子供のころから運動能力には自信があった私でしたが、すっかり運動に適さない肉体に作り替わっていました。当時の自分的には大成功でした。
当時もバイクに乗っていましたが、姿勢のきついスポーツバイクに乗っていたのでツーリングに行くとあちこちが筋肉痛になっていました。筋力不足ですね。
ちなみに当時の体重は身長170cm/体重は約45kgでした。肋骨も浮いていて痩せ型だったと思います。ただ、別に拒食症だとかそういうわけではなく、食べるのは大好きでした。でもお金も時間もなかったので毎日レンチンのパスタだのなんだのを食べていました。余談ですが、この時の影響で今もパスタには少し苦手意識があります。

最低からのスタート

そんなこんなで、色々あって社会人になって、私は登山を始めることになります。

まずは私の登山は「敗退」から始まります(この話は動画や別の記事でも少しお話ししています)。

この時に遂に全然動けない!ということを自覚します。しかし登山の楽しさにこの目覚めて、トレーニングし始めることになります。全く歩けず登れず筋力も体力もない私がどのように登山できる体を作っていったのでしょうか。

登山のトレーニングの進め方・考え方

このように私のトレーニングはゼロからのスタートだったのですがこれが今となってはよかった気がします。学生時代にいくつかスポーツをしていたのですが、それらの筋肉もこの時点ではすべて落ちていました。

ここからはその後のトレーニングのやり方や考え方についてお話しします。

要するにスタート時点では不要な筋肉はなく「登山に必要な筋肉のみを付けられる体」になっていたのです(ポジティブにとらえれば、ですが)。

目的の活動にとって不要な筋肉は重いだけなので、私はこのゼロの状態から登山を始めたことで登山に特化した状態に持っていくことができたような気がします。

トレーニングは「登山」すること!
目的に特化した運動を強化していく

理想は実施したい活動に必要な筋肉のみをつける→つまり不要な運動は一切せず、登山に特化したいなら登山の筋肉は登山でつけるのが良いと思います。なので、トレーニングは「登山」のみ…と言いたいところですが、実際は水泳も少しやっていました。水泳は単に昔からの趣味というのもありましたが、心肺能力の向上には役立ったかもしれません。

登山に必要なトレーニングは登山すること。すべての休日、必ず山を歩く

すべての休日は必ず山を歩くと決めていました。もちろん山が好きなこともありましたが、行きたくないときも天気が悪い日も、何があっても山を歩くと決めていました。

山以外のトレーニングは基本的にやりません。登山のように重力に抵抗する活動において無駄な筋肉は「重り」となるからです。私は登山だけをやりたいんだ、そう思ってやっていました。

また、街でのランニングやスクワットなどの運動もしないようにしていました。たまには知っていたこともありますが、登山はただでさえ足を消耗する活動です。

膝(ひざ)は特に生涯において消耗する部位ですが、街の舗装路でのランニングは膝に大きな負担をかけてしまいます。そのためランニングは適さないと考えていました。やるのであれば重い荷物をもって負荷を上げた状態で坂道や階段を登ること。登山は継続した持久的体力が必要なのでそれにつながるトレーニングは良いですが、体に負担がかかり故障につながるようなトレーニングはやらないようにしていました。

がむしゃらにやるのではなく、必要なことを必要なだけやることを意識していました。故障は登山生命に大きなマイナスになります。

ちなみに実は私は走ることは大好きです。ですがトレランもやらないようにしています。膝などは特に消耗品なので、人生の中で長く「山」をやるためにもあまりよくないと考えているからです。

少しずつ強度を上げていくこと

トレーニングにおいては少しずつ強度を上げていきます。最初のほうは筋肉痛になりますが、筋肉痛にならなくなったらステップアップの時期です。

これは何においてもそうですが「できることやっていても楽しいだけで成長しない」のです。

これはめちゃくちゃ大事です。今自分がやろうとしていることが「ただ楽しいだけのこと」なのか「やるべきこと」なのか一度自分に問いただしてみてください。楽しいことだけやりたい人はこの記事を読む必要はないでしょう。

できないことをやることで肉体や経験が成長していくのです。無理しすぎると色々なリスク(故障や登山特有のリスク)が増えるのである程度の範囲で(判断は難しいですが)前回よりもより強度を上げて歩ける山にトライしていきます。

具体的には「歩く時間」「一日の標高差」「荷物の重さ」などを上げながら、最初は近場の低山ばかり歩いていたのですが、少しずつ次のステップ、次のステップと進めていきました。

時には同じ山で往復したりもしていました。

体力は「慣れ」で伸びる

さて、これは持論かもしれませんがある程度体力がついてくると「慣れ」による成長も大きいです。

山の歩き方でどんどん行動が省エネになってきます。少ないエネルギーで多くの運動ができるようになります。荷物を担いでいても昔ほど疲れなくなります。また、もっと直接的には「しんどさに慣れる」ということもあります。登山は体力を消耗して疲れる運動ですがそのしんどさに慣れてきて、それ自体が面白くなってきたりします。

そうすると段々とどれだけ歩いても元気なんじゃないか?と思えるようになってきます。しかし、そう思ってガツンとロングでタフな山に行くとやはり次の日は筋肉痛になります。歩く速度や荷物の重さで同じ場所でも負荷(しんどさ)は変わってきます。この「負荷」というのは大事で、負荷がかかるように常に「自分をイジめ」ていくことがトレーニングには大事です。
「前回と同じことはしない」を意識して、自分自身の向上をイメージしながら計画を立てます。

「しんどさに慣れる」ということについては、大学山岳部上がりで私と同じくらいの体格の男の子が「ザックの重さが20kgだろうが30kgだろうがもはや誤差くらいにしか思えません。慣れですよ」と言っていて驚かされましたが・・

登山の体力トレーニングはRPGだ

私は登山のトレーニングはRPGだと感じていました。

今行ける場所でトレーニングする→経験値をゲットし、パワーアップする→さらに別の場所へ行けるようになる→行ってみる→経験値をゲットしパワーアップする・・・

何事においても同じかとは思いますが、登山においてはこれがよりわかりやすいかなと思います。

ですので私はとにかく歩いて歩いて歩きまくりました。次第に荷物も重くしていき、登山を始めて2年目以降は大抵の登山で20kgは担ぐことにしていました(今思えば大した重量ではないですが…)。

登山をしながら自分の成長を楽しむことも、登山の醍醐味ではないでしょうか。

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前回より厳しい条件を自分に課す

あとは少しずつできることをエスカレートさせていけば体力はおのず向上していきます。これの繰り返しです。(今は登山よりクライミングしていることが多く、体力は落ちてしまいましたが・・・)

あとは自分に何らかの条件を課すことも大事だと思います。一部の例ですが、、

・目標のコースタイムを決めてラップごとに速度を上げること
・20kgの荷物を担いでトレラン風の人より早い速度で歩く(走る)こと
・前にいる人は全員抜かすこと。ただし追い越すときに息切れしていては情けないので息切れせずに進めること
・一日の行動時間はコースタイム12時間以上の計画にすること
なんてことを私はやっていたことがあります。

そんなこんなで段々このままでいいのか?とよくわからなくなってきた

そんな感じでとにかく歩いて歩いて歩きまくって段々と「あれ、これでいいのか?」と思うようになっていきました。
歩いて歩いて歩いた先にいったい何があるのか?

ここからは少し体力作りからは脱線した話です。

体力を増やしていっても「長く歩くか」「重くして歩くか」「早くして歩くか」それしかないじゃないか…と次第に思うようになってきました。それって新しい場所にトライするために大事なことだろうか?私は何がやりたいのだろうか?そんなことを考えるようになっていきました。

いくら歩けるようになったってその先に未知の体験はない気がしてきて段々と歩いているだけじゃダメなんじゃないか?「この先の登山人生どうなるんだ?」とか考えていました。

このように一般登山は丸2年そこそこ頑張って最終的に思ったのは「歩きは年取ってからでもできる、今しかできないことをやるべきだ」ということ。この記事の趣旨とは少しずれてしまいますが、それからクライミングを始めることになったのでした。

「山は逃げない」なんて言葉がありますが、「山は逃げ」ます、今できることを着実にやらなければなりません。正確には自分の時間が限られているのですがね。。

ただし、体力は絶対です。ある程度の基礎体力がなければ山で行動することは叶いませんので、そこを怠ってはなりません。「体力あってこそ」の次のステップなのです。

やるべきことをやろう

重いものを担がないとだめ

少し話がそれてしまいました、体力作りでは絶対に荷物を軽くしてはいけません。それは本番だけでやってください。トレーニングでは荷物を重くして体力をつけておいた方がいいです。なぜなら登山とは「荷物を担ぐ」ことが前提にあるからです。最近はULスタイルなんかが流行っていますが、そのトレーニングでは一生軽いものを担いでしか行動できません。

より深く、長く、険しい道のルートや山にトライしたいのであればウルトラライトなどに甘えてはいけません。

誰にバカにされようと、ダサかろうと、重い荷物を担いで亀のように忍耐強く歩いていきましょう。それをコツコツやっていればどんな山でもトライできるベースになるはずです。泥臭い山や雪を掻きわけるような登山をやってこそ、自分だけがやりたい登山を実現することができるはずです。

体力はあって当たり前

最後に、登山をするうえで「体力はあって当たり前」だということを忘れないでください。ただ、ここで言う体力と言うのは「最低限当たり前に歩ける体力」と「当たり前に荷物を担いで、長く普通のペースで歩ける」とができればそれでよいのです。その最低限あれば大丈夫でスペシャルである必要はありません。普通でよいのです。

そこがベースとしてあって、そこから自分がどうなっていきたいのか、山でどんな行動ができるのか。例えば写真を撮るための重い機材を担ぎ上げてみる、とか、山で快適に過ごすために装備を充実させてみるとか、行ったことのない場所に行くために計画を立ててみる、だとか・・当たり前の体力があれば行動範囲も広がります。

もちろん冬になれば荷物が重くなりますので、冬をやりたいならそれも見越してしっかりトレーニングしておきたいですね。

トレーニングとは目的のためにあり、日々の行動の積み重ねがその目的を達しするための唯一の道なのです。

年を重ねると少しずつトレーニングがおっくうになってくるので自分への戒めに語ってきました。やるぞ!