米子不動へ!米子大氷瀑の冬の景色【アイスクライミング】

米子不動は日本最大級の氷瀑の集まるエリアで、クライミングの難易度も高いものが集まっています。
難易度の高さには滝の大きさも含まれており、このエリアのスケールの大きな氷瀑は本当に美しく、息をのむような光景でした。今回先輩たちと登らせていただき、写真もたくさん撮ったので登攀の様子と併せて記録したいと思います。

動画にもしてみたので気になる人はこちらから!

今回登ったのは「阿修羅」と「龍神」になります。

このエリアは熟練の(アイス)クライマーたちがトライしたり楽しみに来るエリアですが、私自身は冬の間はスキーに集中する年も多く、アイスクライミングで難しいルートをリードで登れる実力(とメンタル)はまだありません・・(特訓中です!)。

結氷の様子は変わっていくと思いますが写真は2023/02頭に撮ったものです。

やまにちは!まっつんです。ツイッターYoutubeもやってます。

アイスクライミングの「米子不動」って?大氷瀑は美しく圧倒的

北信にある米子不動へ行ってきました。米子不動は夏は「日本の滝百選 米子大瀑布」と呼ばれているエリアですが、これらの大瀑布(滝)は冬には凍り付き、氷瀑となります。
そして氷瀑は冬季のアイスクライミングの対象となって、クライマーたちはこのエリアを「米子不動」と呼び、国内でも有数の高難易度の氷瀑が集まる場所となっています。

※このエリアでは不動滝と権現滝は御神体のため、アイスクライミングは禁止となっております。 地元住民との関係はクライミング文化にとって重要でシビアな問題なのでご注意ください
【阿修羅】
【コブラ】

 

 

アプローチ情報

先述の通り夏は「米子大瀑布」と言う観光スポットなっているので駐車場等整備されています。

米子大瀑布駐車場まで 須坂市の中心市街地から車で約40分。須坂長野東インターチェンジから約50分。
駐車場手前約12kmは、道路幅員が狭い林道を走行します。

ただし冬は林道は除雪されていないことが殆どで、また林道が閉まるため10kmほど手前のゲートのに車を止めて、徒歩でアプローチします。どのあたりまで車で入れるかはその年によって違うようです。

雪の多い場所なのでチェーンなしでは入るのは無謀だと思います。スタックに備えてスコップも必ず持って行った方が良いと思います。
また、単純に雪が多いので車高が高く悪路走破力の高い4WD、AWDのような車種でないとスタックすることも多いようです。
詳細な概念図はアイスクライミングが目的であれば「アイスクライミング全国版」に載っています。

今回はアプローチで荷物を楽に運びたくて、ソリを引いたりしました。結構扱いにくくて途中で担ごうかとも思いましたが、下り坂はほぼ勝手に滑ってくれるので帰り下りになってからはらくちんでした。

ちなみに滝は氷瀑となってクライマーが登攀した際にルートに名称を付けることが一般的で、今回はそのルート名で記載したいと思います。

実際に我々が登った滝は「阿修羅」と「龍神」になりますが、それ以外の滝の写真も載せたいと思います。

氷瀑「阿修羅」のクライミング

今回は2日で登りに行きました。1日目は阿修羅と言う氷瀑に登りに行きました。

監督、でんちゃん、まっつん(私)
装備は60mロープx2です。

朝アプローチして早速氷に向かいました。トレースはあったのでラッセルは不要で楽にアプローチできました。
分岐を右に進んで沢を詰めていくと目の前に大きな氷瀑(登る予定の阿修羅)が見えてきました。これほど大きいのか!と興奮しました。

阿修羅とアプローチ中のでんちゃん

さらに右の方は「不動戻し」があるほうです。今回登っていないけど撮った滝の写真は記事の後の方に載せています。

阿修羅の手前の5mくらいの滝をフリーで上がると、眼前に「阿修羅」が現れました。

【阿修羅】クライマー:でんちゃん(1P)

私は大きな滝はそれほど経験がなく(昨シーズン行った栃木の上タケ沢は大きかったけど米子と比べるとそれほど?)この氷を目の当たりにして、あまりの美しさと神々しさ、そして奥まった岩壁に鎮座する姿に「芸術的な美しさ」を覚えました。

自然って本当にすごいな…と口を開けて(ほげぇと)滝を見上げていました。

中間より下部は水がかなり流れていて、登攀後にはインナーや靴の中まで水浸しになってしまいました。もし泊りなら着替えを持ってくるかこのルートは後に回した方がいいかもしれません…。

1P目じゃんけんして早速、監督が取りつきました。でんちゃんはじゃんけんに負けて悔しがっていました。私は見上げた滝の迫力に完全に気圧されてて「ええ…登れるんかこれ…」となっていました。今回は先輩たちに混ぜてもらう形でフォローのつもりで来ていましたが(ヘタレ)、それでも緊張しました。

下部は茸氷、しかもなんだかアックスが効かない感じで結構トリッキーな感じ。私は茸氷は苦手です…。アイスクライミングってもちろん基本動作(セオリー)はありますが、いろんな形状や質の氷が出てくると、対応して登る必要があります。

監督は氷柱の裏側に入って行き過ぎてしまって、その先へ進むための柱に取り付けなくなり、1P目のリードはでんちゃんに交代になりました。

交代したでんちゃんは氷柱っぽいところに向かって正面からラインを取って進んでいきました。氷柱を上がったところで40mくらいだったでしょうか?そのあたりでロープが動かなくなって(ツララに当たっていたところが氷ついていた)ピッチを切りました。

ちなみにでんちゃんリードで一番傾斜が立っている箇所に差し掛かったときに遠くから誰かが声をかけてきました。地元登山ショップの知り合い店員さんだったのですが、後で「えらいところで声かけてきたな」とみんなで話していました笑(笑い事じゃない!)。

【阿修羅】ビレイ点と登攀中の監督

でんちゃんがビレイ点を作っているとき、スクリューを指したときに氷から「ぴゅー!」っと水が水鉄砲のように噴き出てきたようで、下から見ていると「立ちションでもしてるのか?と」不思議に思いながら見ていました。

私もフォローで登り始めました。茸氷を超えて段差を超えたあたりが一番傾斜が強かったです。ただ、水が流れているせいか氷が少し柔らかく、アックスが刺さりやすくそれは良い感じでした。

ビレイ点は水がずっと流れていて、浴び続けてでんちゃんもビショビショになるのでした。監督はワークマンのカッパ(上下4900円だっけ?)を着ていて「一切水が染みてこなかった!」と言っていました。

【阿修羅】ビレイ中のでんちゃんと濡れたシェル

結局どんな高級ジャケットも撥水が落ちていくので(こういうことをTwitterで言うとメンテがなってないと叩かれますが…)、濡れるようなコンディションには完全防水の安物ジャケットをダメになる前に買い替えていく方が最適なのかなと思ったのでした。

2P目は監督が登りました。

2P目は少し立っている箇所がありましたが、難しい箇所はそれほどなくどんどんロープが伸びていきました。技術的に難はないですが、とはいえ高度感はすごく「自分がリードで、落ち着いてここを登ることができるのだろうか…」と自分のメンタルに問いかけながらフォローで登っていました。

【阿修羅】クライマー:監督(2P)

トップアウト後は立木で懸垂下降し、途中でアバラコフを作って合計2回で降りてきました。

降りた後に腹筋がかなり張っていて、傾斜が強い箇所でアックスを一生懸命振ったのが効いたかなと思いました。あと多分運動不足なのでジム行かなきゃなと思いました。。
(11:00登攀開始-15:00-下降開始)

私もでんちゃんも装備が水浸して下降してからかなりテンションが下がっていましたが、帰りにクライマーズライト側にトラバースしていって2つの氷瀑(夜叉と不動戻し)を見てまたテンションが上がるのでした。

この記事の後の方に写真を載せておきます。

ちなみにテント場に戻ってからは他に2グループいて、みんな知り合いだったり知り合いの知り合いだったりして、世間は狭いな~と改めて思ったのでした。

氷瀑「龍神」のクライミング

次の日、朝起きて準備して前の日にズブぬれになった靴に足を入れました。すごく不快でした。ウェアは何とか比較的乾いたのですが靴の中だけはどうにもなりません…。

今度は昨日登った不動戻しへ向かう分岐を左に進み、目的の「龍神」のある方へ進みました。

「コブラ」と「アナコンダ」(後の方に写真を載せておきます)を見学し、「龍神」の方へ向かいました。

「龍神」は幅も長さもあってとてもカッコいい滝でした。

【龍神】

コブラやアナコンダは蛇の名前ですが、「蛇は進化すると龍になる」と言うのが何かであって、コブラ→アナコンダ→龍神と滝自体が太く勇ましくなる様を見て、なるほど命名した人の感受性は素晴らしい!と勝手に納得したのでした(本当にそういう意図かは不明)。

リードどうするかと言う話をしていましたが、監督は体(と心?)の調子が良くないようで、でんちゃんが登ることになりました。

幅が広い龍神ですが、でんちゃんはラインを見極めて進んでいきました。1P目55mほどロープを伸ばし、写真で見ると抜け口に見える乗越を超えた右端で切りました。実際はその先にもう1P続いています。
龍神は米子のこのエリアでは登りやすい滝と言われているようですが、前日の阿修羅より難しく感じ、後で話すとでんちゃんもそう感じたと言っていました。

【龍神】クライマー:でんちゃん(1P)

弱点を突いて凹に入ると、氷の表側に出てくる必要があり、柱状をトラバースしたり、右へ左へとラインを取ったりして色々な登り方をマスターしなければ安定して登れないなと感じました。不安定な茸氷などはありませんでしたが、傾斜を感じるシーンが多かったです。

【龍神】終了点手前(2P)

2P目は60m弱ほど奥に続いていきましたが、傾斜はかなり弱く立っている箇所はありませんでした。緩やかで長いだけだったのですが、サクサク進んでいくと脹脛が段々辛くなってきました。

傾斜が緩いと手にぶら下がるシーンがなく足(前爪)で立てて進むのが殆どなので、足の疲労にも気を付けないとと思いました。

長いルートでは単純な氷登りだけでなく、確実に登るために色々なことに気を付けて考えるべきことがあるなと感じました。今回このような大きな氷を登って、パートパートを切り出すと難しい箇所は多くないと思うのですが、それが1本のルートになったときに色々な要素が集まって、大きな課題となるのだなと。やはり氷は奥が深いと感じたのでした。

ちなみに、大きな滝を抜けた奥に小さな滝があって登れそうでした。まあ登らなくていいかな、となって下りました。

【龍神】終了点から上にある小滝

終了点は右上に立木があって、そこから2回懸垂下降しました。

【龍神】下降準備

後続PTがいたのでラインに注意しました。

【龍神】下降中:監督

(8:30登攀開始-12:00下降開始)

氷瀑「不動戻し」の写真

不動戻しの写真を載せておきます。このエリアでは一番やさしいルートのようで、確かに傾斜はそれほど強くないように見えますが正面の長い壁の面はすごくしんどそうです。しかし、ドーンと落ちてるところはかっこいいので、リードで登ってみたいなと思いました。

【不動戻し】

氷瀑「夜叉」の写真

これが夜叉だそうです。2段になっている感じで、上部が立っている感じでしょうか。こちらも「夜叉」と言う名前がぴったりのカッコいい滝でした。

【夜叉】

右に向かって垂れている氷のツララは、白い髪や髭がたなびいているような夜叉の姿に見えます。

氷瀑「コブラ」と「アナコンダ」の写真

写真の右の滝が「コブラ」左が「アナコンダ」です。この滝は1つでも十分迫力が凄いのに2つ並んでいて、また2つの滝のタイプが違っていて本当に素晴らしい迫力で、美しかったです。

左【アナコンダ】右【コブラ】

アイスクライミングをしていなくてもこの滝を見に来るだけでも価値があると思います。

しかし登るとなるとどちらも難しそうです。特にコブラはすごいです。。ライン取りにもよると思いますが氷柱って感じです。

いかがだったでしょうか

今回は米子でたくさんの素晴らしい滝を見て、またフォローですが登らせていただき素晴らしい体験となりました。

もっと氷を登りこんでリードしたい!と思う自分もいますし、やっぱり怖そうだ…と思う自分もいます。

でもそれ以上にこの美しい氷をまた見に来たい、取り付きたい。とにかく美しくて心が震えた2日間でした。

年によって結氷状態が違うようなので、こういう記録は別のシーズンと比較するために自分のためにも良いかなと思っての記録でもあります。

今回使った装備

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無理しない範囲で、できることを広げていきたいです。その結果こんな美しい滝を自分で登れたらどれだけ素晴らしいだろうと思います。ただ氷はメンタルの面が凄く大きいのでビビりの私にどこまでできるか…ところでこの日現場で来ていたハードシェルが見当たりません。どこかに落ちていたら教えてください(ホグロフスの赤いやつです)