栃木の足尾の岩場でのクライミング。ウメコバ沢とジャンダルム【冬季登攀】

1月半ばに栃木の足尾の岩場で登ってきました。1泊で行って、取り付いたのは2本のルートになります。
アイゼンとアックスを使った冬装備の登攀でしたが、壁はドライで雪の気配は殆どありませんでした。
登ったのは1日目はウメコバ沢のチコちゃんルート(途中まで)、2日目はジャンダルムの中央ルンゼで、その時のことを記録したいと思います。

初めての岩場なので岩場の紹介も少ししています。

やまにちは!まっつんです。ツイッターYoutubeもやってます。

栃木県の足尾の岩場(クライミングエリア)ってどんな感じ?

栃木のクライマーから足尾の話を聞いたことがありました。写真を見せてもらうとなかなか大きな岩場で、気になっていました。
ただ栃木県は長野県に住んでいる自分の家からはなかなか遠いエリアで、高速を使っても片道4時間近くかかります。
今回地元の山岳団体の方が主催のクライミングの集まりがあったので参加させていただきました。

岩場自体はかなり大規模で圧倒されました。特にウメコバ沢周辺の岩に囲まれたエリアはすごくて、登れそうな場所が無数にあるような感じで、スケールも素晴らしかったです。

足尾の岩場

足尾の岩場周辺には多くの壁があって、氷も発達する場所でもあり、ウィンタークライミングの練習の場としてはかなり良い場所に感じました。アプローチは林道歩きが長めですがただただ林道を歩くパートが長いだけなので、苦労はありません。
夏も登られているようですが、岩は脆い部分があり、ルート上、ビレイポイント、下降ポイント含め動く岩は多く存在して脆いなあと言う印象は感じました。

良く登られているルート上や立っている箇所は浮石はないですが、それでも落石には十分注意したほうが良いと思います。掴もうと思った岩を少したたくと動いたり割れたり、ということもありました。

支点は基本的にはナチュプロで、ルートによっては少しボルトが整備されているようです。
終了点もルートによって整備されているものと、そうでないものがあるようです。
ジャンダルム周辺は比較的整備されているようですが、ウメコバ沢のほうは特に下降点、加工ラインなども気を付けたほうが良さそうな感じでした。

岩の脆さから、先行パーティが入っているルートやその付近はあまり取り付きたくない感じがしました。

駐車場、アプローチとルートの取り付きについて

山道をドライブしていくと終点に立派な駐車場があります。トイレはありませんでした。

そこからゲートを超えて林道を歩きます。途中まで自転車も走れそうです。

ジャンダルムまでは林道1時間ほど。左手に大きな岩の塊が見えてきます。ジャンダルムへのとりつきは対岸にわたって、素直に基部まで歩いていきます。


徒渉は工事のコンクリートの上を渡れます。渡ってからは適当に歩いてもつきますが、少し右めに明瞭な踏み後があってそこが歩きやすいです。
トップアウト後の頭からの下降は、下を向いて左の方を見るとピンクテープと踏み後があって、たどれば徒歩とフィックスのクライムダウンで降りれました。フィックス箇所は結び目のないロープなので懸垂しても良さそうです(数メートル)。

ジャンダルムを超えて林道をさらに1時間ほど進むとウメコバ沢の合流地点につきます。林道は平坦ですがちょっと岩がゴロゴロしてきます。その中間くらいの対岸に氷のルートがいくつかあるようです。
ウメコバ沢につくと、ルートのとりつきへは松木沢を渡渉して、ウメコバ沢を上流へ少し上がります。徒渉は靴を脱いでもいいですが、場所を選べば石を使って渡れました(岩は凍ってるのでスリップ注意)。沢の入り口に2か所フィックスの張られた傾斜の強い岩があります。

1つ目のフィックスには下降時の懸垂用に結び目のないロープも設置されていました。
そこから10分ちょっとほど程歩いて上がっていくと、いくつものルートの取り付きが見える広場に出ます。

上を向いて一番右に我々が取りついたチコちゃんルート、その左に右ルート、ジェードルルートなど、一番左?に滑り台のルート、その少し右奥にチャンピオン岩稜と言う感じ?でしょうか。パッと見た感じなので自分用のメモ程度の情報です。

ウメコバ沢【チコちゃん】ルートの登攀(途中まで)

1日目はチコちゃんルートを3Pの終了まで登りました。
移動などでとりつきが昼前くらいになったため早めに引き返しました。

ルートグレードはⅣ級のようです。登ったことのある人に聞くと「簡単ではなかったかな」と言っていて、ちょっと緊張しました。
下の画像では真ん中に見えているスラブ面から黄色くなっているあたりを登るのが1P目です。

でんちゃん、上半身マッチョクライマーさん(地元の山岳団体のメンバーの方)、私の3人PT
(ニックネームは私が勝手につけています。)

とりあえずじゃんけんして登る順番を決めました。

"1P目 (Ⅲ級)"リード:まっつん
私は1P目はスラブっぽいので怖そうだしリードしたくないなと思っていましたが、じゃんけんに勝ってしまったので登ることに。
チコちゃんルートはこのあたりの岩場では一番やさしいようで、1P目はⅢ級となっているのと傾斜もそれほどないので、何とかなるかなと思ってとりあえず登り始めました。
結果的には簡単ではないと感じました。自分はそれほど冬装備での岩ルートの経験はないですがⅢ級にしてはやや難しいのでは?と感じました。

チコちゃんルートの取り付き下部はスラブのように見えますが、近づくとホールドやスタンスは色々使えるものがありました。コーナークラックでプロテクションを取ることができるのと、クラックができる人ならジャムも決めれると思います。
自分はゴワついた冬用のグローブのジャムが怖く(信用できなくて)殆どジャムは使えませんでした。
ドライな状態だったのもありアックスはほぼ使わず数回フッキングしたのみです。
プロテクションはカムを0.3-2を使いました。自分はあと少しあったらなと言う場面がありました。

特に抜け口が悪くて、抜ける前に立ち上がるのにスタンスの位置が良く無くて苦労しました。
プロテクションは適度にとれるものの、とにかくビビってしまって時間がかかってしまいました。
反省です。。この点についてはどう克服しようか悩み中です。

抜けてからはテラスに錆びたリングボルトが2つあるのですが、もう少しリッジを上がれば良い岩角があったのでそこまで上がってスリングでピッチを切りました。
45m弱?くらいだったと思います。

赤いのは自分で上半身マッチョクライマーさんが撮ってくれました。

"2P目 (Ⅲ級)"リード:上半身マッチョクライマーさん
少しガレを進んだ後段々の岩がたくさん見えて、ラインが良くわからなかったのですが右の方に向かって登っていくと、凹角があるようでそちらから登りました。
凹角前にロープの流れが悪そうだったので一度合流。凹角内は登りやすそうに見えましたが、個人的にはそれほど快適ではなかったです。
もしかしたら正面のリッジを上がるのが一般的だったかもしれません。

"3P目 (Ⅲ級)"リード:でんちゃん
リッジの少し右側から棚のようなところを上がって、リッジ上に抜けました。ここもホールドは豊富ですがやはり快適ではありませんでした。流石のでんちゃんは特に顔色も変えず登っていました。

"4P目 (Ⅳ級)"登らず下降
4P目、このルート唯一のⅣ級パートが見えました。
パッと見登りやすいのか登りにくいのか、わかりにくい見た目のクラックが目に入ってきました。しかしカッコいい見た目をしています。カムは効きそうに見えます。

3つのラインを取れる箇所があるとのことだそうですが、ここなのでしょうか?左右にラインがあったのかもしれません。

左奥に隣のルートを登る2パーティが見えました。ここからは他のルートにとりつくメンバーの姿もよく見えました。
ちなみに夜にはテントで懇親会の予定で、これ以上ピッチを伸ばすとかなり遅くなってしまいそうな予感。

と言うことですでにアックスを決めて離陸しかけていたでんちゃんが「餃子くいてえしな~(夜の食事)」と言いながら戻ってきて、引き返すことにしました。
チコちゃんルートは全体で6~7ピッチ?のルートでこの登らなかった4P目が核心ピッチ?のようです(間違ってたらすみません)。

丁度の隣の岩の頭に残置ハーケン3枚があったので捨て縄をかけて下降。50mロープ2回の懸垂下降で降りられました。
下降中も浮石が落ちたりしてちょっと危険でした。

ウメコバ沢のエリアはすごい迫力の岩場でした。
他のルートにとりつく人たちの写真を少し張っておきます。

上の写真は中央のルンゼ左のほうの壁に緑と青の服の人が取りついています(小さくてわかりにくいですが)。遠くから見ていると滑り台のように見える壁を、アイゼンとアックスで登って行っていました。特にリードしていた方はすごく安定しているように見えて、上手だなあと思いました。

ジャンダルム【中央ルンゼ】ルートの登攀

夜は沢山おいしいものを食べて飲んで、話して、星空もきれいでとても楽しく夜更かししてしまいました。たくさん食べさせてもらって幸せいっぱいでした!(食いしん坊です)

翌朝は当初はウメコバ沢に行く予定でしたが、少し寝坊してしまったこと、アプローチと帰りの運転時間のことを考えて幕営地から近いジャンダルムの岩場で1本ルートを登ることにしました。

こちらはウメコバ沢よりはアプローチが近いだけでなくルートも短く1日に数本登ることもできそうな規模です。

この日はでんちゃんと私で登りました。

"1P目 (Ⅲ級くらい?)" 1P目を登り始めたのですが、10mほど上がったところから逆走スラブ気味になって、なんてことないスタンスですがアイゼンで立てない感じがして、でんちゃんに変わってもらうのでした…。
ちなみにこの箇所は全面ベルグラになることもあるらしく、その場合かなり難しくなると聞きました。

そこからはルンゼと言う名の通り、狭まったルンゼの底をガリガリアイゼンをスタックさせながら登っていきました。

登る前に地元の山岳会の方から「ワイドのところがある。そんなに登りやすくないかも」と聞かされていましたが、でんちゃんはワイドらしきパートの先に立ち上がりここは「ザック降ろしたほうがいいですよー」と教えてくれました。

001

実際行ってみると岩と岩に這いつくばって挟まるような、斜め?の割れ目になっていて、ザックをビレイループにぶら下げて挟まる感じで登りました。
傾斜はないですが、アイゼンを履いているとやはり足がおける場所がないので、しっかり挟まってプッシュを使いながら体をググっと上げました。

その後も全然快適な感じはなく、乗越ではブッシュをつかんで体を引き上げたりしながら進んでいきました。少しして合流。

そこで一旦ロープをたたんで50mほど?ガレ場を進むと次の岩場が見えてきます。
私たちの登ろうとしている隣のルートにとりついている方がいて、色々教えてくれました。

"2P目 (Ⅲ級くらい?)"リード:でんちゃん
傾斜が優しくなり、ホールドもかなり豊富な感じになりました。今回のクライミングで唯一快適と感じた部分でした。

下部を抜けて少し右に上がり、また割れ目に挟まって進んでいきます。ここの割れ目はどんどん傾斜が立ってきて?行き止まりになるので、最後は上の淵を掴んで這い上がりました。
落ちるような場所はないですが、プロテクションが取れるところが少なくランナウトしているので、リードだと慎重になりそうに思いました
終了点は立木を使いました。

"3P目 (Ⅲ級くらい?)"リード:でんちゃん
このピッチも割れ目の中を上がっていきます。浮石やザレが沢山割れ目の底にあって、落石を起こさずに行動するのはかなり難しいので、ビレイポイントに気を付けたほうが良さそうです。

出だしの凹角の乗越は結構立っていて、スタンスもないので体を挟んで張りながらプッシュで体を上げながら、最後は抜け口のブッシュを掴んで這い上がりました。
乗越なんかでもアイゼンを付けていると足が上がりきらず膝とか背中とか色々使いました。変な体勢になったせいで、ただのスリングの回収なのにプロテクションの回収に時間がかかってしまいました。こういうところも改善しなければと思います。

002

凹角の底を進みますが、足元は浮石やザレが詰まって窄まって(すぼまって)いてアイゼンでガリガリしながら登っていきました。足元が安定しているのかしていないのかわからないなあと思いながら進んでいました。

でんちゃんには「このくらい岩場を難しいと感じず登れるようになれば楽しくなるよ」と教えてもらいました。精進しなければと思います。

抜けるとジャンダルムの頭にでました。
気持ちの良い見晴らしで、奥に山のピークが見えました。頭には「植林試験中」?みたいなことが書いてある看板がありました。見晴らしは良いです。

下降は歩いていけます。ピンクテープを伝って歩いていくとフィックスがありました。
自分はハーネスを付けたままだったので下部のフィックスではちょっと懸垂しましたが、どこもクライムダウンで降りれます。

いかがだったでしょうか

今回は初めての岩場、栃木の足尾で登ってきました。
アプローチの林道は長いものの、労力なくこれほどの岩でトレーニングできる場所はそうないと思います。長野からは少し遠いですが、近くにこんな岩場があったら強くなれるのではないでしょうか。

自分はこういった登攀の経験は多くはないのですが、今回自分の課題も良く見えました。アイゼンでスタンスを拾うのはまだまだ怖く、なかなか一歩が踏み出せませんでした。
特にアイゼンとアックスなど冬装備での登攀の経験をもう少し増やして、登れる範囲を広げたいなと感じました。アイゼンでのスタンスの拾い方、や足元の空間の作り方、ライン取りとムーブの起こし方、あとはビビってもじもじするために、時間がかかるところが最大の課題だと思います。
もじもじしてても難易度は変わらないのだから、進むならさっさと進みなさい!

ただこういった冬装備でのロッククライミングは大怪我と隣り合わせの部分もあるので、自分なりに無理せずできる範囲でやって行きたいなと思います。

でんちゃんや一緒に登ってくれた人、今回色々話してくれたメンバーの皆様、そして一番はイベントの主催者の栃木のクライマーの皆様に感謝いたします。
長野からは少し遠い岩場ですがとても素晴らしい場所を知ることができ、良い機会をいただきました。