2022年7月の3連休。木曽駒ケ岳、中御所谷 本渓へ歩きに行きました。
中御所谷は木曽駒ケ岳のロープウェイの真下にずっと見えている谷です。
雨の連休、雨の沢登りへ
2022年7月。今年は6月末に異例の速さの梅雨明け宣言があり「観測史上最速の梅雨明け」などと言われていたのに、連休の予報が悪い。。
実際は全然梅雨は開けておらず例年まだまだ天気は不安定でした。
「梅雨明けとらんやん!」なんて言いながら。
もともと計画していた泳ぎの多い沢をやめて、水量の影響が出にくそうな中御所谷へ日帰りで行くことにしました。
昔から木曽駒ケ岳のカールに来るたびに「このカールの下の方は一体どうなっているのだろう?」と気になっていた場所で、今回行けてとても嬉しかったです。
連休の天気は不安定そのものでしたが、予報を見るとかろうじて天候の回復が見込めそうな中日の一日を選択したのでした。(実際は終日雨の中の行動となった…寒かった)
中御所谷はどんな沢?沢って行ってみないとよくわからない
中御所谷へ行くと決まって、記録を読んだり人の話を聞いて私はどんな沢かよくわからなくなっていました。
私自身、沢登の経験は極めて浅く(昨シーズン始めたばかり)で全然よくわかっていなかったり、正直舐めてて怖い目にあったこともあったり、逆にビビっていると思ったより快適で拍子抜け?だったこともあって、「沢っていってみないとよくわからない」っていうのが最近の感想です。
もちろん条件によって難易度が変わるなんてことは山では当然のこと。
しかし沢の経験値が低いのでいかんせん想像力にかけるのです。
今回は割と快適そうな沢歩きなのかなと思っていたこともあり(要はちょっと舐めてる)、より緊張感のある一日となった気がします。
緊張した要因としては、雨が降っていたこともあると思います。水線から離れた岩場も草付きも大体ビショビショだったりドロドロだったりしてスリップしそうでした。
今回は最初の日暮しの滝とその直後のCS滝脇の登り以外はロープを出しませんでしたが、フリー(ロープを使わないの意。フリーソロの略。ロープを出さなくてもクライミングできそうなときに行う)で登るにはややショッパイ場面が連続して、高度感もあり、精神的にすり減った部分もありました。
アプローチと行動時間、装備について
さて、詳細な行程はほかの記録にお任せして、山行記録です。
アプローチ:菅の台バスセンター(バス乗車)~しらび平(バス下車)、遊歩道5分で入渓地点
下山:ロープウェイ
パーティ:でんちゃん(仮)、まっつん(私)の2名
装備:カムナッツ少々、50mロープ、登攀具、タワシ、グローブ他。
使用装備については、記事の最後にリンクしておきますのでチェックしてみてください。
行動時間については自分がもたもたしたところもありましたが、全体的にライン取りなど良く、順調に遡行できたのではと思います(知らんけど)。
何時ものポーズ。なんかヒョロっこい。
山行記録
バスに乗れない!長蛇の列でタイムロスからのスタート
始発のバスに乗ろうと菅の台バスセンターのバス停に5時前に到着しましたが、なんと全然バスに乗れないではないですか!
天気予報が悪いので空いてるだろうと高をくくっていたところ、長蛇の列でした。列に並び、結局入渓は7時ごろ。
朝から見事に雨が降っていて絶対天気が悪いの木曽駒へと向かう皆さんの「ずく(長野弁で「根性」の意)」がすごいと感心させられました。(自分たちのことは棚上げ)
昔の話ですが紅葉の時期の上高地へ行ったとき、バスの混雑のことをすっかり忘れていて始発に行ったのに2時間くらい並んだのを思い出しました。この時は紅葉ってことすら忘れていたのですが。。地元民になってからすっかり油断しています。
入渓~序盤の核心越え
最初はしばらく雨も降っておらず、雲も薄くなってきた感じがして、このまま晴れるか?と淡い期待をいだいていました。
この日の天気予報は良くなる見込みだったのですが、結局終日雨となりました。しかも最初は少し止んでいて、パラつき~徐々に雨は本降りに。
ちなみに下山すると町は晴れていて、まあそんなもんか(松本帰ると大体晴れだし)。
気温も低く(稜線で10度の予報)、水につかる場面が少ない今回のルートでよかったと思います。私はすごく寒がりです。寒さに強いパーティメンバーには申し訳ないけど…
バスでしっかり寝こけて、しらび平で下車し遊歩道を行くと、すぐ入渓でした。このルートの良い所はアプローチも下山もほぼゼロってことですね。アプローチシューズとか持って行かなくて良いし快適です。
早速「日暮しの滝」です。
2段見えていて、ロープは1段目だけ出しました。滝の右わきの岩が露出したラインが登れそうだったので、私が行ってみましたが、右往左往して結局パートナーに交代してもらうはめに。
右の凹各はホールドが乏しく(濡れてるから?)、いったんリッジの左側へでて右へトラバース、みたいなラインで行こうとしました。
優しそうに見えましたがビビって一歩乗り込めず…相変わらず根性なしです。雨でびしょびょの壁でホールドが滑る気がしました。濡れてるのなんて沢じゃ当たり前なのに。残置ハーケンが少しありました。
抜けて合流すると次の滝の水しぶきが凄くてビレイしていたパートナーが寒い寒いと叫んでいました。
寒さに強いこの男が寒がるとは珍しい!しかし確かに寒い。そこでカッパを着ることに。
ちなみに頭上にはロープウェイが行きかっています。
パートナーは「ロープウェイが見えたら手を振ることにする」と言うが誰かこっちを見ているのだろうか…?丸見えであるのは間違いないですがこんな雨の日に沢を登る人が居るとは誰も思わないかも。
二段目(10m弱ほど?)の滝をロープは仕舞ってフリーで登ると、その次は超でかCS(チョックストーン)がある滝が出てきました。
「チョックストーン」と呼ぶには挟まってる岩でかすぎじゃね?スーパーチョックストーンじゃね?と一人で思っていました(意味不明)。
にしてもすごい水量。迫力が凄い!上からドカーンと何か落ちてきて降り注いでもおかしくないくらいです。
滝の右側の泥の詰まった凹角をフリーで登ろうとしますが、ちょっとやばそうなのでロープを出すことにしました。
結果的に全体でここが一番悪かった(核心?)気がします。
梅雨の長雨で地面はズルズルの泥で立てないし、手掛かりにしたい草もすっぽ抜けるし、壁にも泥がついていて、今なお降る雨で岩のフリクションも最悪。
何とか手掛かりになりそうなブッシュの集まりが少しあったのでそれを使って進みました。雨で土が緩んでいるので、根こそぎすっぽ抜けないかドキドキしました。泥くさくてワイルド…。
ここもパートナーが行ってくれて、本当にナイスファイトでした
やはり雨が降っていなければもう少し登りやすいと思います。
抜け口に太く大きな良い木があってそこで合流してすぐそのまま横移動ですぐにCS滝の上に出ることができました。
チョックストーンの滝を超えてから中盤まで
これ以降は最後までロープを出さなかったので結果的には30mロープで十分でしたが、ライン取りによっては50mあると安心かもしれないです。30mだと懸垂するにしても大して下降できないし。
草をつかむようなところがこれ以降もたくさん出てくるのでずっとグローブ(ホムセンのやつ。最後にリンクしています)をつけていました。
アザミもあって油断するとイテテ!となります。
雨脚はどんどん強くなっていきました。この後もたくさんの滝が続くのですが、滝は水量が爆発していて、真っ白です。
始めてくる沢なので普段から水が多いのか、雨だから増えてるのかよくわかりません。
滝の脇とかももっと水線付近で登れるラインがあったのかもしれないけど、今回は水量が多すぎて近づけないことも多かったと思います。おまけに水は冷たい。
序盤で結構疲れちゃって少し平らなところが続いたところで「もうすぐ終わり?」みたいに話して、地図を見たらまだ1/3も進んでなくて笑いました(いや泣いた?)。
事前情報はそこまで入念に調べていないので、なんか滝がいっぱいあるけどどのくらい進んだか全然わかってません。
落差のある滝が多く、またナメ滝でもスケールが大きい感じで、さらにナメ脇のスラブはヌメっていたり。私はビビりなのでヌメりにはめっぽう弱いです。
とにかく進むしかない!ほんの少し平坦な瓦が出てきますが、息つく間もなくまた滝が連続し始めます。暑い日だったら最高なんだろうなあ!
滝は直登するにしても脇や巻きをするにしても、ちゃんとラインがあるので、とりつく前にしっかり見て、相談しながら進みました。
単純な巻き以外にも支沢の滝から上がって、巻いたり、うっすらある踏み後(獣道かもしれないけど)を参考にラインを探ったり。そんな感じで進んでいきました。
露出していて高度感のある巻きだと足がすくんでしまいます。雨で岩草が濡れているのでスリップしたら一巻の終わりなので、慎重に進みました。
高巻きでは手掛かりは草しかなく、草はつかんでもブチブチ千切れる弱弱しいものばかり。
足元が良く見えないので土の地面なのか、泥なのか、岩なのか、切れてるのかわからないし、終始緊張がありました。雑に歩けない。
高巻き中にふと足元を見ると地面(沢)がはるか遠くにあって、遠近感がよくわからなくなり頭がくらくらする、あの感覚。「落ち着け、こんなところで落ちるわけがない」と勇気を振り絞って一歩一歩進んでいきました。(大げさ)
高巻や登りの途中つま先立ちで踏ん張り続けて脹脛がパンプしそうになったりしました。いっそアイゼンでもあればいいのにと思ってました。
滝の中を登るときはホールドはあれど進むごとに徐々にヌメりが強くなったりするので、タワシを使って苔を掃除することで、道を作っていったり。
手掛かりはあるがヌメりやバランスの悪さで、いやらしいところとか、でっかい岩を超える時には一人がパートナーを押し上げて、後続に手を差し伸べたりとか、なんかパーティの一体感が出る場面もありました。
終始水量がやばくて滝は爆水流。
迫力は満点だが水の音が轟音。
たまに水音に混ざって「ゴロゴロゴロドゴオオ」みたいな音が聞こえる気がして、雷か?と思っていましたが、どでかい岩が転がってきてたのかも、って話になりました。確かに。
梅雨で稜線ではずっと雨が続いていたでしょうし、鉄砲水みたいなのが来たり、たまっていた土砂とかがダム決壊みたく爆発して落ちてきたらやばいかったかなと思いました。
まだまだ沢での行動については勉強中です。
大きな連瀑を巻いて、千畳敷カールへ
残り1/3手前くらいのところで超でかい連瀑が出てきて、ここをクライマーズレフト側の支流を詰めて大きく巻きました。
支流を詰めると尾根の左側に入るので、途中で藪漕ぎをしてまた尾根を超えてトラバースしつつ元の沢に戻ってきました。
このあたりの藪漕ぎは意外と濃くなくてスムーズに進め、最後も懸垂下降などせず普通に沢に降りれて、ライン取りが良かったと思います。踏み跡も良く見るとあったりなかったりして、なんとなく辿ることができました。
この辺りは踏み跡を上手く拾えないと藪漕ぎルーファイが大変になりそうです。先人には感謝。人の歩いたところに路はできるんだなあ(しみじみ?)。
進んでいくと少しずつ周辺の木々が低くなって景色が開けてきました。
ゴロゴロ岩と沢。樹林帯を抜け、稜線に詰めあがるような沢が初めてだった自分にとっては楽園のように感じました。
もちろんずっと雨でガスなんですけどね。
あと、指が千切れるくらい水が冷たかったです。いくつか隣の沢の上部には未だ雪渓が残っていました。
きれいだなあーと思いながら歩いていましたが、結構くたびれていて、体(主に下半身)がヨれていました。
終始緊張感のある歩きが多かったので、足のあちこちに力が入って、なんか筋肉がパンプしてる感じ。最近クライミングしていなかったから単に運動不足ってのもあると思います。
寒さもあってか足が吊り気味でした(まあもともと吊りやすい)。
ゆったりペースで最後の沢の雰囲気を味わいながら、ゴロゴロの岩と水を楽しみながら。
そのうちカールが見えてきて、木曽駒に向かって斜面を歩く登山者の姿が見えてきました。
気が付いたらロープウェイ付近の遊歩道へ。雨はがっつり降っていて、みんなカッパを着て歩いていました。
泥だらけでめちゃくちゃ臭いままロープウェイに乗るのはやばいと、人の来ない場所でちょっと身支度を整えました。
あとはロープウェイに乗って降りるだけ。登るだけで下山なしって、なんて贅沢なんだ…
「沢登り(下山なし)」ってパワーワードじゃん、と思いました。
まとめ・今回使ったアイテム
今回はバス長蛇の列による入渓時間の大幅な遅れから始まり、GoProのメモリーカード忘れ(涙)、予想より悪い天気、とか色々ありましたが、とても楽しい歩きとなりました。
日帰りで、これほど充実間のある沢登ができるのはロープウェイとバスさまさまだと思います。
また、昔から行ってみたい場所に行けるというのは嬉しいものです。山を初めて、クライミングをやったり仲間の誘いで沢を始めたりと、色々手広くやって中途半端ではありますが、自分たちの力で「どこへだって行けるんだなあ」と思えた山行でした。ありがとうございました。
使用したアイテム
最後に今回使ったアイテムを一部紹介しておきます。シューズはモンベルのサワークライマーを使いました。
今回新しく買った防水のフィッシングポーチが凄くよかったです。あと、前に一緒に沢へ行った人が使っていたカメラを買って使ってみましたが中々良かったです。
でも実は設定間違えて、解像度凄い低い状態で撮影していたのでした…。