【映画】本当にみてほしい戦争系「ローン・サバイバー」【レビュー】

想像を超える真実の物語

壮絶な戦闘アクションシーンの裏には感慨深い真実が潜む。戦争映画というビジュアルを通して伝える、戦争と人の真実についての物語です。

映画概要

ジャンル :リアル系戦争もの
個人的評価:★★★★☆(90点)

タイトル    :ローンサバイバー、Lone Survivor
制作国     :アメリカ合衆国
日本での公開日 :2014年3月21日
監督      :ピーター・バーグ
出演      :マーク・ウォールバーグ
テイラー・キッチュ
エミール・ハーシュ
ベン・フォスター
エリック・バナ

内容紹介(ネタバレなし)

ローンサバイバーを直訳すると「唯一の生存者」となる。この映画はアメリカ海軍特殊部隊ネイビーシールズ(Navy SEALs)により、現実に行われた「レッドウィング作戦」を題材とした作品である。この作戦はネイビーシールズ創設以来最悪の出来事言われ、壮絶で最悪な結果を残している。この真実の物語は、唯一の生存者、そうローンサバイバーとなったネイビーシールズのマーカス・ラトレルによって手記とされた。映画、ローンサバイバーはこの手記を原作とした極めて現実的な物語である。アメリカ兵とイスラム教タリバンの激しく時には痛々しい戦争シーンがメインとなっている。

 

迫力あるリアルな戦闘と美しい映像

戦闘シーンの緊張感や迫力は申し分ありません。この映画では終始主人公側が劣勢に立っており、手に汗握る展開が続きます。戦闘シーンの迫力だけでなく、アフガニスタンの山岳地帯の美しい風景は作中を通してみることが出来ます。様々なシーンでこの美しい風景との演出がセッティングされており、なんとも感動的なシーンもあります。
主人公たちは戦闘が進むにつれて傷だらけになっていく様子が鮮明に描写されており、この様子はかなり生々しく、目を覆いたくなるような痛々しさです。そういった表現が苦手な方はご視聴を控えた方が良いかもしれません。

<↓↓ここからストーリーについてネタばりあります!注意してください。↓↓↓↓>

映画のストーリー

潜入暗殺ミッションが一転、一方的な全面戦闘に

映画の題材となったレッドウィング作戦の目的はアフガニスタンのとある山岳に潜伏したタリバン(イスラムの過激派)の幹部であるアフマド・シャーを暗殺すると言うものでした。この作戦はネイビーシールズと言う米兵最強と言われる特殊部隊によって遂行されることとなります。実動部隊の4人が主人公。

作戦地域に移動し山中に潜伏中に、重大なトラブルが起こります。まずは作戦本部との無線が通じなくなると言うこと。ターゲットが潜むのはアフガニスタンの山岳地帯。山に阻まれ4人は作戦本部との無線が通じない、衛星電話も繋がらないと言う孤立した状況に立たされます。

そこで更なるトラブルが起こります。ヤギの放牧のためにやって来た村の住民に発見されてしまいます。今回の任務は潜入と暗殺であり、発見されてしまっては、作戦の今後についての判断は大きな決断となります。村人をどうするか(開放するか、殺すか・・・)、判断するためにも本部に連絡をとりたいところですが、それはかなわない状況です。ここは潜入ミッション中に発見されてしまうと言うことの危険性がリアルに伝わってくるシーンでした。結局村の住民を開放して彼らは撤退することとしました。しかし、開放した村人たちは懸念していた通りにタリバンに報告したようで、多数のタリバン兵らに追撃されることになります。

暗殺任務であった本作戦で、4人で潜入していた状況の中、200人近いタリバン兵から攻撃を受けると言う最悪の事態に発展します。いくら特殊訓練を受けたネイビーシールズと言えどもこの絶望的な状態から行きのびることは難しいでしょう。戦闘が始まると、圧倒的な戦力差によってネイビーシールズの4名はすぐに窮地に立たされます。右からも左からも、敵に囲まれ逃げ場を失った彼らのとった行動とは・・・。物語は進んで行きます。

窮地に追い詰められる4人の行く末は果たして

敵に囲まれたネイビーシールズの4人は後ろの崖から飛び降りると言う選択をします。それ以外に安全な進行方法が無かったためです。このシーンはど迫力でした。もの凄い速さで崖から転げ落ちます。しかし、多勢に無勢状態の現状では多少遠くに逃れようともすぐに追いつかれます。4人は体のあちこちに被弾し、崖から落ちた傷も受けてズタボロ状態。血みどろで、みていてとても痛々しい絵面が続きます。

私はどこかでこの4人が優勢に立って生き延びると言う結末を期待していたと思います。しかし、そんなはずはありません。現実的に考えてありえません。それが、リアルです。この映画はそういった意味でも本当に終始緊張しながらみることができます。視聴者の「こうなれば良いのに」なんて希望的幻想は完全に砕かれます。ひたすら追いつめられ・・・。そして映画のタイトル、「ローンサバイバー」となるのです。

「たった一人の生存者」ローンサバイバーの意味

ローンサバイバーはどのように誕生したのか

この絶望的な状況下から4人のうちの一人マーカス・ラトレルは唯一の生還者(ローン・サバイバー)となります。ではローンサバイバーはどのようにして誕生したのでしょうか。彼はヒーローのように強い兵士で突如超回復をしたわけでなく、己一人で生き延びたわけではありません。

では、どうやって生き延びたのか?それはアフガンの村の住民が傷ついた彼を見つけだすと、なんと助け匿ったのです。なぜそんなことをしたのか?私はどういうことか理解できませんでした。しかし、この謎は映画の最後に解明されることになります(後述のパシュトゥーンの掟)。

アフガンの村人は彼を助けようとします。すると先ほどのタリバン過激派たちが村人が米兵を匿っていることを聞きつけ、銃を持って襲撃し、マーカス・ラトレルを捉えて処刑しようとします。その時、アフガンの村人は銃を構え、彼らを撃退します。この行動がきっかけとなり、ネイビーシールズを攻撃していたタリバン過激派に恨みをかうこととなり、結果的に多数のタリバン兵に村ごと強襲されることになります。

そんなとき、QRFが発動されて米軍が村に訪れ敵を撃退しマーカス・ラトレルも救出されることになります。

QRFとは

急速対応部隊 (Quick Reaction Force)の略。要請があった場合直ちに駆けつけ援護を行う部隊

マーカス・ラトレルが生き残った理由

「パシュトゥーンの掟」が彼を生かした

アフガンの村人はマーカス・ラトレル一人を救うことを決定したことにより、村ごと襲撃を受けました。しかしこうなることは彼を助けた時点で想定できたことです。ではなぜそのようなことをしたのか。映画の最後で、これはアフガンの村人らが「パシュトゥーンの掟(パシュトゥーンワーリー)」に従った結果によるものであると明らかにされます。

パシュトゥーンの掟の中にある、
「敵から追われている者を、どんな犠牲を払っても守り抜く」という掟を守ったのです。

彼らは何の見返りもない、むしろ最悪なリスクを呼び寄せることが分かっていながらもこの掟を守るために、マーカス・ラトレルを救うと言う選択をしたのです。そして、命がけで、敵から追われるマーカス・ラトレルを匿い銃を持ち、守りきったのです。彼らは彼らの信じる掟を命がけで守るために、見返りも求めず、リスクもかえりみず、貫き通します。そんな彼らの姿と、誇り高い精神に本当に敬意を感じました。

この掟を彼らは決して違えないそうです。そう、それが米兵に対してであろうと、テロリストであろうともです。これが大きな戦争の引き金と成った事実もあるようです。例えばアルカイダのビンラディンを匿ったタリバンもこの掟に従った結果であったそうで、それに対してブッシュ大統領は「テロリストを匿う者もテロリストの仲間である」としてアフガニスタンの攻撃から戦争に繋がったそうです。
私はこの事実をしって、パシュトゥーンワーリーがどういったものか、今まで知らなかったイスラム教、タリバンの人々そして米国の関係を調べ、学ぶことになりました。

単なる戦争アクション映画ではない

私はパシュトゥーンの掟に従って命がけで米兵を守った村人が実際にいた、この事実に戦慄しました。これが、事実だと言うのですから、信じられない気持ちでいっぱいです。しかし、現実に起こったことです。私は、この映画を非常に高く評価しています。その理由は、単なるアクション戦争映画ではなく、現実を伝えようとする内容だったからです。私は戦争もののゲームや物語、映画が好きです。それは戦争アクションや武器、ストーリーや演出がカッコいいからと言うものもあります。
しかし、この映画はそれだけではありません。「戦争」と言う言葉やビジュアルだけでなく、そのさらに深くにあるものを伝えようとしているように感じます。だから私は感動することができましたし、深く考えさせられることになりました。そういう意味で、間違いなく名作と思いますし、多くの人にこれをみて理解して欲しいと思いました。

私のような、単なる戦争もの好きのど素人にこのように考える機会を与えてくれたこともありがたく、素晴らしい映画だと思っています。とにかく、個人的に好きな作品でした。原作も読みたいところです。

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アメリカの特殊部隊ものはかっこいいですね。FPSプレイヤーとしてこういう迫力ある戦争物は好きです