最後の一撃は、せつない。
美しい風景が広がる広大なフィールドを馬で駆け、16体の巨像と戦う青年(ワンダ)、その目的は魂を失った少女を蘇らせること——。どこか寂しげで美しい世界の中で、アグロ(馬)と二人、旅をする。魅力的な世界観と悲しげなストーリーがおりなす、独特なゲーム「ワンダと巨像」のHDリマスター版の紹介です。ネタバレはほぼないです。
個人的な評価
総評 :★★★★★ 点数:88点(100点中)
難易度 :★★☆☆☆
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アクション :★★☆☆☆
システム :★★★☆☆
ストーリー :★★★☆☆
グラフィック:★★★☆☆
演出 :★★★★★
ボリューム :★★★☆☆
クリア時間 :約12時間(1周あたり/ノーマル)
ジャンル:アクション、アドベンチャー
ワンダと巨像(HDリマスター)
公式サイト : こちらから(新窓)
プラットフォーム: PS3
発売 :SCEジャパンアジア
開発元 :同上
発売日 :2011/9/22
:2005/10/27(PS2版)
価格 :3980円
ジャンル : アクション
レーティング : CERO B(12歳以上対象)
美しく寂しげな世界観に息をのむ
広大なフィールドを相棒と駆ける
どこまでも続く広いフィールドで巨像を探して旅をする主人公の青年ワンダには、アグロという愛馬がいます。フィールド上には村や家は無く、人はおろかモンスターすら存在しません。トカゲや鳥などの動物はたまに見かけますが基本的にアグロと二人きりです。平原や川、海など様々な地形は美しく、その景観を損なう邪魔者は一つたりとも存在しません。ただ、一人と一匹でこの広く美しく、どこか寂しい世界を駆けてゆく、この雰囲気が何とも言えず、心地よく、息をのむような魅力があります。
剣の光に従い巨像を探す
16体の巨像を倒すことがこのゲームの目的であり、フィールド上のどこかにいる巨像を探す必要があります。闇雲に探すのもありだとは思いますが、基本的にはヒントに従います。主人公が持つ剣を日光の届く場所でかざすことで巨像の存在する方角に向かって光を反射して指し示します。その光の射す方角に進んで行けば巨像が存在するというわけです。ただ、その場所に到着したらすぐに巨像が姿を現さない場合もあり、その場合は少し謎解きのような形で巨像を出現させます。
巨像の倒し方を模索する
巨像は主人公、ワンダの数十倍から百倍近くほどの大きさがあります。個体差がありますが、圧倒的な大きさです。ではどのように倒すのか。主人公は剣と弓を持っていますが、大きさの差からこれらの武器を普通に使うだけでは倒せないのは明白です。巨像ごとに大きさ、形態や武器、攻撃方法などは全く異なりますので、それぞれその都度対処法を考える必要があります。巨像には弱点があります。簡単に弱点を知るには巨像を探すときと同じように剣をかざすと、弱点は光が指し示してくれます。その弱点に達するために巨像の体をよじ上ったり、高い場所から飛び移ったりします。ただ、そう簡単に弱点を見つけられない場合もあります。その場合には少し頭を使って、周りの地形やオブジェクトを利用したりと、攻略法を模索する必要があります。
体力と握力を増やす
ワンダは巨像と戦ったりフィールドを移動するときに壁や崖、巨像の体にくっつく必要がある場合が多いです。ここで、握力が重要になって来います。ゲームの画面右下にピンクの丸と体力バーが表示されています(右画像の三枚目、左上は巨像の体力)。これらを増やすことで巨像やフィールドの攻略がやりやすくなります。握力を増やすためには尻尾が光っているトカゲを倒すことで得られる光る尻尾をゲットします。このトカゲはフィールド上のあらゆる所に潜んでいますが、手っ取り早くはセーブ用の祠には必ず1体は存在するので祠を見つけたら必ずトカゲを探すことにすると良いでしょう。体力は、果物をゲットすることでアップします。
自然あふれるワールドの中でボスと戦う
世界観、演出、雰囲気に魅了される
このゲームの特徴として、ボスである巨像を倒すことが全てです。他に目的はありません。雑魚敵は一匹も存在しないし、村もこなすべきクエスト、ミッションも一切存在しません。ただひたすらフィールドを走り回り巨像を探し、倒すこと、それがこのゲームの全てです。ボスを倒す意外にはフィールドを歩き回ることしかやることが無いのです。このように言ってしまうと、単調に思えてしまいます。しかしこれは演出の一つなのです。このゲームの世界観を感じるために用意された有象無象の一切が存在しないという設計なのです。ただ、誰もいないフィールドでワンダとアグロがただ走る、その風景にはどこか寂しさがあります。かつては何かの建造物を形作っていたであろう岩々は風化し、今は残骸としてそこに転がっている。広く、どこまでも続きそうな平原には風が吹く音、草が靡く音、鳥の声だけが聞こえる。特に語られるでもないのに、このゲーム独特の美しく寂しい世界観とその雰囲気をうまく演出しています。正直、私は癒されました。
あと、BGMもかなり良いです。
個性的なボスとの戦闘の楽しさ
16体の巨像はそれぞれ個性を持っており、毎回ボスとの戦いの際に驚きが待っています。まず、見た目だけで驚かされることが多いのですが、それ以外にも驚くようなことが多々有ります。例えば、巨像は基本的に岩のような体と生身の部分が有る場合が多いのですが、そのような体つきにも関わらず驚くような動きをする場合があります。また、地形を利用して攻撃をしてくる場合もあり、逆にこちらが地形を利用したりして戦う場面もあります。相手の武器や攻撃パターンを把握して利用する場合もあります。ボスごとの個性に合わせて柔軟に攻略法を見いだす必要があります。結構倒し方を発見するまでに時間がかかる巨像等もおり、私はとある巨像を倒すだけで2時間近くも格闘したことがあります。
また、巨像との戦いでアグロが度々活躍します。ボス戦をクリアして行くとアグロとの相棒意識がこちらにも芽生えてきて、かわいくて仕方なくなります。
広いマップとカメラによる演出
フィールドを駆けていると、カメラが勝手に離れて行き、遠くまで見渡せるようになります。これにより、より広い範囲が画面上に写り、世界の広大さを演出しています。ゲーム中に存在するフィールドは全て1つのマップ上に存在しているため、ローディングは一切ありません。本当に大きなマップがただ1つだけなのです。遠くの方まで見えるように移動中にはカメラアングルが移動します。例えば崖を移動しているときは崖の先から下の滝が見えるようにカメラが勝手に移動し、演出に貢献しています。
良くなかったところ
問題点:ボス戦でのカメラアングル
カメラアングルについては演出のために拘られているのかもしれませんが、その動きが邪魔臭いときもあります。それはボス戦です。巨像はワンダより圧倒的に大きく、その全体を映し出すことでワンダと巨像の大きさを引き立てて、迫力を出そうとしている感があります。しかし、壁際に移動したときにこのカメラは非常に厄介な動きをします。色々なゲームでカメラの動きは問題となることが多いですが、「ワンダと巨像」においてもカメラアングルは大きな問題点であると言えるでしょう。特に、巨像の体を登ったりして移動するときには、移動した先で勝手にカメラのアングルが反対側にグーンと移動したりする場合があります。進行方向が真反対になるので、左スティックの倒している向きをカメラに合わせて変更しなければ成らず、すぐに対処できない場合、失敗してしまう場合があります。
「ワンダと巨像」と「ICO」
ワンダと巨像のゲームデザイナーである「上田文人氏」が同様に手がけた「ICO」というゲームがあります。「ICO」はワンダと巨像よりも前に制作、発売されたゲームですが、この2つのゲームにはいくつか似通った部分があります。まず、やれば分かるのですが、ゲームの雰囲気が似ています。「同じ人が作ったから似ている」という感じではなく、意図したような似方に感じました。どこか寂しげで、美しいその雰囲気そのものが同じです。次に、ワンダと巨像の結末を見たとき、これはICOに通じているのではないか?と思わされる大きな点がいくつかありました。これはネタバレになってしまうのと、私がICOをまだ全部クリアしていないことから明確には書きませんが、プレイされれば分かることと思います。この2つのゲームを同梱したバージョンも販売されていることもこの推論を裏付けることになると考えられます。詳しくは<こちら>。←ネタバレ有りです。
海外版、「ワンダと巨像」と「ICO」同梱パッケージ
総括
このゲームを一言で言うのであれば「雰囲気ゲー」だと思います。雰囲気を楽しむ、というのが一番ぴったりに感じます。私は普段激しい対戦ものやアクションゲーム、FPSをプレイすることが多く、正直ふと癒しを求めることがあり、そんなときにこのゲームをプレイしました。その癒し効果は思った以上に絶大で、すっかり虜にされてしまいました。美しい自然と雰囲気を感じ、癒されたい人にはもってこいだと思います。そして、このゲームをプレイされた方は是非「ICO」もプレイされることをおすすめします。
私は最初にこのゲームをやったときにすぐに思い出したものがありました。それはニンテンドー64の頃にやった「ゼルダの伝説、時のオカリナ」でのハイラル平原を思い出しました。あのとき、私は小学生くらいだったと思うのですが、初めてあの広く自由なハイラル平原をエポナ(馬)で走ったときの感動を思い出したのです。その時の感動を上回るものがワンダと巨像にはありました。フィールドを駆ける喜びと感動は数あるゲームの中でもダントツにインパクトがあります。
あとストーリーについてはネタバレになるので触れるつもりはありませんが、切ないです。このゲームの世界観の物悲しさはこの悲しい物語の終焉を予測させるために用意されていたのかもしれない、と思えるくらい、雰囲気とマッチしたストーリーと成っています。また、謎を残すような終わり方でもあるので、そういったストーリーの考察や考察されているサイトを探すのも一つの楽しみと言えるでしょう。