【映画】男同士の愛憎劇を描く「キル・ユア・ダーリン(Kill Your Darlings)」【レビュー】

 

史上最も美しく危うい殺人事件

詩人を目指す大学生らのひそかな革命活動と、その裏に潜む男同士の愛憎劇を記した映画。実話が元になったサスペンスです。同性愛表現が作中で多く出てきます。

キル・ユア・ダーリン

映画概要
ジャンル : ドラマ・サスペンス

個人的評価:★★★☆☆(50点)

タイトル :キル・ユア・ダーリン
(Kill Your Darlings)
制作国  :アメリカ合衆国
監督   :ジョン・クロキダス
出演   :ダニエル・ラドクリフ
デイン・デハーン
時間   :103分

内容紹介

詩人アレン・ギンズバーグが大学時代に 殺人事件に巻きこまれた実話をもととした映画。大学に通い始めた主人公(アレン)は大学での教育に不満を感じていた。そんなとき、型破りで魅力的なルシアン・カーと言う青年に出会う。アレンはルシアン・カーの考えに魅かれ、行動をともにし始めると、退屈な大学生活から解き放たれた。次第に友情以上の思いを抱き始めるが、ルシアンは旧知の同性愛者デビッド・カマラーから執拗に言い寄られており、あるとき悲劇が起こる。この映画は、微妙な人の心境を表したヒューマンドラマで、 特筆すべきは男性同士の話しだと言うことである。

映画の見所

この映画は文学に投身する主人公ら大学生のヒューマンドラマです。ただし特徴として、ゲイの男性の心を描いていることが挙げられます。男同士の「ねっとり」とした愛情と複雑な心情が描かれています。

また、登場人物が『ハリー・ポッター』ダニエル・ラドクリフ『アメイジング・スパーダーマン2』デイン・デハーンがゲイ作品を演じると言う意外性にも着目できるかもしれません。

<↓↓ここからストーリーについてネタばりあります!注意してください。↓↓↓↓>

映画のストーリー・内容詳細

学生生活に不服を感じ「文学革命」を起こそうと画策する主人公ら

主人公は「アレン・ギンズバーグ」。この物語のモデルとなった実在する詩人です。作中のアレンは「詩人」の息子であり、思想家でもあります。

作中で文学を学ぶことを志し、大学に入学した主人公はすぐに学校生活に不満を持ち始めます。大学での教育は文学に関する知識ばかりを与える堅苦しいものでした。詩人の息子であり、また詩人に憧れていたアレンには文学に対して自分なりに思うところがありました。大学では自分の考えを表現する手段は学べず、知識を教えられるだけ。そんな現状にフラストレーションを感じていました。

そんなとき、「ルシアン・カー」と出会います。彼はとても型破りな人間で、鋭い感性を持ち、人を感化させるある種のカリスマを持っていました。アレンはそんなルシアンに魅かれ、行動を共にするようになります。彼は 自分の思想を表現する為には色々な経験をすることが重要と考えていました。彼らは様々な場所に赴き一言で言えば「やんちゃ」なことも行いました。 ルシアンと行動をするようになって退屈な日常を送っていたアレンの世界は大きく変化しました。

そんな中アレンは次第にルシアンに友情以上の感情を持ち始めます。また、ルシアンも同様に・・

参考 アレン・ギンズバーグ(Wikipedia)

キル・ユア・ダーリン

ルシアン(左)とアレン(右)

作中ではアレンのルシアンに対する「愛情」の念がリアルに表現されている

この映画では「男の男に対するリアルな恋愛感情」が表現されています。主人公(アレン)がルシアンに持つ憧れの思いが次第に異性に抱く者と同様の愛情に変化し、独占欲となって行く心象が表現されています。

これはなかなかに気持ちが悪いものでもあります。作中ではゲイのことを「フェアリー」だの同性愛者を「フルーツ」だのといった表現があることが割と序盤から紹介されますが、主人公たちもそちらの方です。

キル・ユア・ダーリン

ルシアンに付きまとう同性愛者の存在

しかし、結果的にはアレンのルシアンに対する思いは破れることとなります。これは、ルシアンに執拗に付きまとう同性愛者のデビッド・カマラーの存在が大きく関わってきます。デビットはルシアンの前の大学での教員であり、現在も大学での課題等を一手に引き受けて、ルシアンの学業面を支えるために尽くしています。ルシアンの本当に心のうちがはっきりしないまま、少し複雑で歪んだ人間関係は払拭されないまま物語は進行して行きます。

この辺りは私ちょっと良く頭に入ってきませんでしたのでうまく説明することができません。とにかく、男同士の三角関係のような感じで、アレンもルシアンに対する独占欲に駆られて心を乱します。

キル・ユア・ダーリン

デビット(左)アレン(右)

好きになった相手に拒否され、見知らぬ男性相手にヴァージンを失うアレン

結局のところ主人公(アレン)はルシアンに裏切られるような流れになります。そこで、悲しみに打ち拉がれたアレンはルシアンと初めて出かけたバーに向かいます。そこで、ルシアンの後ろ姿と似た男性を見つけます。悲しみを埋めるかのように、その見ず知らずの男と行為に及びます。この映画の中で、唯一直接的なアダルトなベッドシーンです。

また、これまで共に活動していた仲間たちも様々な形で離れていきます。

あれだけ想っていたルシアンと結ばれることは結局無く、まさか行きずりの男と・・・なんだかやりきれない思いを感じました。

史上最も美しく危うい殺人事件のラスト

さて、最後のオチです。キャッチコピーにもあった「史上最も美しく危うい殺人事件」。この物語は最終的にとある「悲劇」によって締めくくられることとなります。ルシアンが執拗に付きまとっていた同性愛者デビッド・カマラーを殺害するのです。ルシアンはデビッドに対してナイフを向けるのですが、驚くことにデビッドはそのナイフに向かって自分から刺さりに行きます。デビッドのルシアンに対する深い愛情から来る行動でもありました。

この事件の真相を知ったアレンはこの事件に関連する一部始終を物語にまとめます。そして、何と大学の課題に提出してしまいますが、受け入れてもらえず、アレンは大学を去ります。

そして、助けを求めるルシアンの前からも立ち去ります。これにはアレンなりの考えがあったことが、回想シーンより伺うことが出来ます。

映画のストーリーはここまでです。

ダニエル・ラドクリフ、ゲイ役で出演した映画のラブシーンに「驚かれるだろうな…」

アレン・ギズバーグを演じたダニエル・ラドクリフはハリーポッターシリーズの主人公を演じた、誰もが知る有名俳優です。私もハリーポッターシリーズは全部見させて頂きました。そんなダニエルがこの映画を演じた後に以下のようなコメントを述べているようです。

キル・ユア・ダーリン

「あんな経験はしたこともないね。観客の中にはちょっと…まあ、ゲイのラブシーンに愕然としてしまう人もいるだろうな。」

しかし、このラブシーンについては“性的に生々しいものではない”ともダニエルは説明を加えている。

「ホント、そんなシーンってワケじゃない。実際には何も見えないしね。生々しいのは、そのシーンで描かれている感情だよ。とても傷つきやすくて、ちょっとためらいがち。そんな瞬間を表現しているんだ。」

引用 ダニエル・ラドクリフ「キルユアダーリン」コメント

とのこと。

個人的な感想・総評

男同士の恋愛シーンはちょっとこたえた

個人的な感想としては、すっきりもせず、感動もせず、すごく面白い!とは思えませんでした。同性愛表現も随所に独特の「気持ち悪さ」が感じられ、不快な部分も多くありました。そういった表現が苦手な方はご覧にならないことをおすすめします。

ただ、この気持ち悪さがこの作品の独特の魅力とも言えるかもしれません。映画の随所から何とも言えない「じっとり」とか、そんな表現が合いそうな雰囲気があります。「男同士」の恋愛ドラマは珍しいので、そういった意味では見る価値があるかもしれません。

主人公は実在の詩人だと言いますが、自己を表現する、芸術家や文学家には同性愛者が多いのかもしれません。偏見は持っていませんが、ちょっとした憶測です。

ホモシーンが全てではない!

また、ホモシーンばっかりに目がいきがちですが、序盤のストーリーの重きは詩人を目指す思想家アレンらのささやかな革命活動の発起にあります。こういったシーンは素直に楽しめます。

ただし、序盤の文学の専門的な話しや流れは、文学に興味の無い私には難しくもありました。そういったことに関心があれば興味深いかもしれませんし、彼らの行おうとしていることや心境の変化などをより理解できて楽しめるかもしれません。

また、少し古い時代の独特の雰囲気も良く表現されています。

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ちなみに私がこの映画を見ようと思ったきっかけはダニエル・ラドクリフが演じる「ホモクリフ」を見てみようと言う話しになったからです。